小汚いオカマ日記

当ブログでは『オカマ』という単語を使いやすさの都合上、本来の意味での「オカマ」とは別の多義語として使用しています、ご注意ください。

【カードゲーム】デジタルTCGとリアルTCGの原体験の違い

(サムネイル画像はサイゲームズ様より引用させて頂きました)

 先日、シャドウバースからカードゲームを始めたオタクフレンズから「シャドウバース、全然勝てないからカードゲーム勝てるようになる方法を教えてくれ」というLINEが飛んできた

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シャドウバース、おっぱい丸出しでエッチだと思った 

 そもそも自分はシャドウバースをやっていないし、更に言うならカードゲームも別に上手ではないので真っ当な意見を提示することが出来なさそうなので、勝てないと相談してきたオタクフレンズに色々と質問をすることにした。

 おれは高校生の時に始めた「Magic;the gathering」というカードゲームを20台後半になっても続けている気持ちの悪いオタクなので、質問を続けている内に「これはカードゲーム原体験の問題ではないか」という結論に辿り着いた。

 それは「デジタルTCGとリアルTCGでは、ゲームを始めたばかりの頃に経験することが180度異なっている」ということだ。

シャドウバースで初めてカードゲームに触れたオタク

 そもそもシャドウバースからカードゲームに触れたオタクは、ゲームを開始した瞬間から「インターネット上に氾濫する情報」に曝されることになる。

 なにせゲームの窓口がインターネットに直結したアプリケーションなのだから当たり前なのだが、ランクマッチに参加するボタンを押した瞬間に、どこの誰とも分からないオタクとの対戦がマッチングされ、「カードで遊んで楽しむ」というよりも「対戦相手に勝つ」ということが至上命題にされてしまう。

 さらに少しGoogle「シャドウバース 強い」(小学生か?)と検索をすれば『△△というカードが強い』という単純な情報から、『Tier1(環境で一番強いデッキ群)は●●と▲▲だからこれに勝てないと意味がない』いった本来であればカードゲームに慣れてから触れるはずの情報の嵐に直面することになる。というか、この『本来』という言葉の意味自体がリアル紙ゲームに根ざしたものであり、デジタルTCGではゲームスタート時点が既に戦場のド真ん中なのだ。

 

 こうなってしまえばもう頭はパニックだ。ここで「ゲームを楽しむ」という発想はなかなか出てこない。多くのデジタルTCGユーザーはとにかく「勝利をする」ことが快楽につながる環境に、ゲームを始めた瞬間から放り込まれてしまう。

 そうなってしまったら最後、すぐにインターネット上に転がっている強いデッキのリスト――どうしてこのデッキが強いのかについて理解する土壌も与えられないまま――コピーして、顔も知らないオタクと対戦させられる。

 その結果、負けてしまえば「自分のドローが弱かった」「相手がブン回った」等の愚痴が始まってしまう。プレイングの簡単な指南はインターネットに転がっているし、なにせ自分が使っているデッキはインターネットで保証された『強いデッキ』であり、勝つことが大前提なのだ。

 勝って当たり前、負ければストレス。ゲームを始めた直後からこんな状態でゲームを続けて上手になるわけがない。楽しくないものに対して理解を深めようとする人間はなかなかいないはずだ。

リアルTCGのはじまり方

 ここまでデジタルカードゲームに触れたが、次にリアル紙遊びの方に目を向けてみよう。冒頭で書いた通りリアルTCGとデジタルTCGでは「カードゲームの原体験」が違う。

 そもそもゲームの始め方が違う。大抵は「既にTCGに慣れ親しんでいる友人から誘われた」「何となく興味を持って友達と一緒にワイワイ始めてみた」の2択だと思う。つまり「アプリのインストールが完了した瞬間にゲームが始まる」のではなく、信頼できるオタク友達がいなければカードゲームが始まらないのだ。

 カードゲームを初めることの最初の発想が「友達と楽しく遊ぶ」ことが目的なのだ。何となく興味を持っても、スマホのボタンを押しただけではゲームが出来ないのだ。これはハードルが高い。何せ他人を巻き込む。友達と遊ぶのだから、自分だけが楽しくては意味がない。友達と一緒に楽しく遊んでいくことがリアルTCGの敷居の高さであり、同時に醍醐味でもあると思う。

 これだけでは具体性に欠けるので、実際に俺自身がカードゲームを始めた時の経験談を書き連ねてみようと思う。マジック・ザ・ギャザリングのことをよく知らない人は一番最後の段落まで適当に飛ばして頂ければ幸いである。

始まりは不要カードの束

 始まりは親戚の家に遊びに行った時だった。親戚のお兄ちゃんが友達と何やらカードで遊んでいて、何となく興味を持って一緒に遊んでもらったところがスタート地点だ。適当にルールを教えられ、とりあえずデッキを貸してもらって対戦し、「あ、よく分からんけど面白い!」と思ったのだ。

 これが20代後半現在になっても続けているMagic;the Gatheringとの出会いだった

スマブラ感覚で遊んでみる

 お兄ちゃんから要らないカードを大量に貰って、後日学校の生徒会室に持ち込んで「親戚の家で遊んだらこのゲーム面白かったからやろうぜ!」スマブラをはじめるくらいのノリで友達たちに持ちかけた。

 大量のカードの束を漁って効果を1つ1つ読み、面白そうなカードを見つけて試しにデッキを組んでみる。そして3~4人ほどがデッキを組み上げる。コンセプトも何もないただの紙束で対戦をして、ギャハギャハと勝っても負けてもオタクスマイルで遊びながら強いカードと弱いカードを理解していく。そして弱いと思ったカードを抜いて、カードの山から自分のデッキに相応しいカードを探していく。勝っても負けても、楽しい。これがとても大事な経験だと思う。

デッキのコンセプトを理解する

 その内に皆が皆、それなりにコンセプトを持ったデッキが完成する。赤単色のフルバーンやら、青のドローを絡めたコントロールデッキもどき、かくいう俺は白の小さなクリーチャーを集めてブン殴るだけのビートダウンを作った。

 この時のデッキの強さは、例えるならかなり強いシールドデッキくらいなものだし、フォーマットも何も無いのだが、楽しく遊んでいく。

 けれどそのうち友達の赤単に負けるのが悔しくなってきて、赤の防御円(晴れる屋にすりよるオカマ)といった露骨な対策カードを入れてみたり、相手にも同じことをされたりするイタチごっこが始まり、メタゲームの循環を理解した。(この時、メタゲームという単語は勿論知らない)

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露骨な対人メタからメタゲームの概念を簡単に理解する。友達の赤単相手に入れちゃだめだよ。

そして強すぎるカードと出会う

 その様子を、俺の高校の生徒会長は何日かぼんやりと見ていた。(生徒会長は参加していない)

 そんなある日、いつものように部活を終えた後に文化部部室棟に行ってマジックで遊ぼうと部屋に入ったら、生徒会長から「昨日カード買ってデッキ作ったから遊ぼう」と誘われた。

 俺はいつもの白単を使って1~3ターン目とクリーチャーを展開する。生徒会長はただ土地を置くだけで4ターン目まで何もして来なかった。

 手札を全て使い切ってクリーチャーで殴り続けて相手のライフは10前後、このまま殴って勝てると思っていた4ターン目にそれは唱えられた。

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流石に流石に~~~????!!!!! 

 カードを出された時、はじめて見るカードだったのでとりあえず効果を読んでみた。全てのクリーチャーを破壊する。おわり。嘘やん。これ4マナって嘘やん? だって俺の生物全部死んでるし……

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学生のカジュアルマジックを破壊するね~

 「これ強すぎだろw」と言った。とりあえず手札がない。山札からカードを引く。土地。何も出来ない。ターン終了。そんなやり取りを繰り返したあと、俺はデッキの切り札を引き当てた。

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赤ちゃんみたいで可愛い(30円)

 渾身のキャストすると相手はおもむろに島を2枚タップして……

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オタクが大好きそうな効果だね~

 打ち消された。対抗呪文は知っていた。使われたことは勿論あった。だが絶望感が違った。何せ俺の手札と場には1枚もクリーチャーがいないのだ。そしてターンを返した後に、このゲームで初めて生徒会長は自分のターンに呪文を唱えた。

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 効果を読んで「なにこれ?」と思わず声が出た。俺のデッキを2枚破壊する。たったそれだけだった。そして俺のターン終了時、デッキは2枚破壊され、生徒会長はドロー呪文で手札を増強した。

そして追加でキャストされたのは……

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いい加減にしろ

 ミルストーリーじゃねぇか!!!!!!!!!!

 今の俺なら間違いなくオタク叫びをしてしまうだろう。だが当時の俺はそのデッキの名前なんて知らなかった。「これって俺のクリーチャーがダメージ与えられなくなるってこと?」と聞くと「うん」と言われた。

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俺のクリーチャー(30円)

 そして毎ターン俺のデッキは2枚削られていき、最終的にライブラリーアウトで負けてしまった。その後何度やっても、当然勝てない。どうにこうにも物語の円と神の怒りがどうしようもない。一度リソースを失ってしまえば再展開は出来ないし、仮に後続を引いても全てダメージが止まってしまう。

そして辞めていく友人

 次の日、一緒に遊んでいた全ての友達がミルストーリーの前に為す術もなく敗北した。そこで勝てないからつまらないと何人か脱落してしまった。

 一方俺は何となく負けることが悔しくなって初めてカードショップへ行き、そのデッキに勝てるようなカードを揃えた。俺のデッキは白青のクロックパーミッションになった。

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神の怒りを打ち消せばいいじゃんw(オタクスマイル)

 神の怒りにはこちらも打ち消し、物語の円をブーメランでバウンスして軽量のクリーチャーで殴り切った。そこからイタチごっこが始まり、お互いに「このままじゃあ埒が明かないから大会とか出てみようぜ」という話になった。

チャンバラしてたら戦車に轢き殺される

 そこで初めて、インターネットでカードゲームの情報を仕入れた。このゲームにはスタンダードというフォーマットがあり、このままではカードが古くて大会に出られないらしいことを知り、古いカードを何となく似たようなスタンダードのカードで代用して初めて大会に出た。

 サラリーマンの優しそうなおじさんに当たった。初めての大会であることを伝えたら、「あ、じゃあちょっとつまんないかもしれない……」と謝られた。よく分からないが俺はとりあえず頷いた。

ゲームは4ターンで終わった。

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いっぱい呪文唱えたら

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4枚出てきちゃった

 戦場には4枚のボガーダンのヘルカイトが降り立ち、俺のライフは0になった。マッチはすぐに終わり、俺はおじさんにデッキのことを教えてもらった。そしてインターネットのマジックの情報サイトを教えてもらい、そこで所謂Tier1のデッキ群を知った。そこにあったデッキは完全なる暴力、戦車、ハーレーだった。デジタルTCGユーザーがゲーム開始数日で手に入れる情報を、友達と何も知らずにギャハハと遊んでゲームのセオリーを覚えた後にようやく手に入れたのだ。

そしてトーナメントプレイヤーへ

 その後は早かった。当時高校生の俺は金銭的な問題から1つのデッキしか持てない。ひたすらにやりこみ、他のデッキの研究をして、池袋のオーガや秋葉原のアメニティドリームまで足を運んだ。五竜とかPWCも勿論参加した。

 そこの小さな大会には、高橋優太やら渡辺雄也といった今のスタープレイヤーが出場していた。

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自分の名前を冠する大会が開かれるってヤバくないすか?

 俺はここまで来て、ようやく「負けるのが本当に悔しい」という状態になった。デジタルTCGから始めた人間はきっとここに到達するのが早いのだと思う。対戦相手が目の前にいないスマートホンの画面に向かっているのだから当たり前だ。対戦相手をNPCだと思ってしまうこともあるだろう。勝つために勝とうとしている。

 おれはマジックの大会に出ている内に、特定の人が毎回勝っていることに気が付いた。その人は運が良いのか? 違う、上手なのだ。だから俺もゲームに勝つには上手になるか、または人が知らないゲームの勝ち方をするしかない。1枚1枚のカードを理解するミクロな視点から、ゲームの流れを考えて勝つためのプランニングをするというマクロな視点を理解しなければゲームには勝てないことを知った。勝つために上手になろうとした。

 俺はそこからカードゲームにのめり込み、休日の大会に足を運び続けた。そして俺は自分の中の敢闘賞、日本選手権の東京予選の優勝を達成した。高校生のオリジナルデッキで優勝したのはとても嬉しかったし、入賞者の撮影の時に周りに1人も高校生がいなかったことが誇らしかった。

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高校生の俺には成功体験と言っても過言ではない出来事、岡田尚也にも勝てたし~

 日本選手権の予選を抜けるなんて、今で言えば大きなプロツアー予選を抜けるようなものなのかもしれないが、今でも自分の中の一等賞だったりする。そして10年の趣味になるTCGにズルズルと足を引きずりこまれていった。まぁ成功体験なんて自分の足を引っ張るだけなんですけどね……

 大学生になって一度マジックを離れている間、生徒会長はプロツアー予選を抜けて海外のプロツアーデビューをしていた。相も変わらず青黒系のコントロールが好みのようだ。俺は社会人になってマジックに復帰して、高校生の時から大好きだった白緑のカラーリングを使い続ける縛りを入れて今でも遊び続けている。

 スイスラウンドを抜けても1~3没するのが悲しくなってインターネットに書かなくなってしまったし、PPTQ抜けても「プロツアー行けなきゃ意味ね~!!!!!!」と言ってしまう有象無象のTCGのトーナメントプレイヤーの1人になった。負けた時の言い訳に「おれは白緑しか使わないから……」と気持ちの悪い理由で自分を納得させながら、ずっとマジックで遊び続けている。

ここまで自分語りをした理由

 デジタルTCGからカードゲームを始めて「勝ちたい」と思うようになるのと、リアル紙ゲームからカードゲームを始めて「勝ちたい」と思うようになるのには、多くの場合はバックグラウンドが大きく異なっており、更にそこに至るまでの期間に大きすぎる差がある。

 俺は自分がカードゲームで環境というものを知って「勝ちたい」と思うようになるまでのことで、ここまで長々とオタク文章を書くことが出来るが、デジタルTCGからはじめたユーザーが環境を知って「勝ちたい」と思うようになるまでの間に同じことが出来るかと問いたい。

 これは別にデジタルカードゲームを悪く言うわけではない。ただ、ポッと始めたばかりのデジタルTCGでいきなり勝てるようになるわけがないということが言いたかった。それなりに勝てるようになるまでの間には覚えなければいけないことがたくさんあるし、そもそもカードゲームは楽しいものであるはずだ。

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ぼくもハースストーンやってるもん、何とかレジェンドになれる程度だけど……

 「カードゲームは勝つ時が一番楽しい」のは当たり前かもしれないし、自分も勿論対戦に勝利したときが一番楽しい。負けるのは最悪だ。だけど、これでも負けるのが最悪だと思うまでには自分なりに長いオタクカード歴史を歩んでいる。多くのTCGプレイヤーが俺と一緒かどうかは知らないが、ゲームが楽しいからワイワイ遊んで、その内の何割かがトーナメントプレイヤーになっていく。

 最初の質問に戻ろう。「全然勝てないからカードゲーム勝てるようになる方法を教えてくれ」という質問に対して、俺は具体的に答えることが出来ない。技術的なことなら俺よりデジタルカードゲームが上手なプレイヤーに聞けばいいと思う。

 ただ1つだけ言いたいことは「まだ始めたばかりなんだからそんなに気負わず、楽しく遊べばいいじゃん」ってことだけだ。つまらないなら、始めたばかりの趣味なんだから辞めてしまえばいいのだから。

おわり。